2022年 09月 15日
【原発賠償京都訴訟】第15回控訴審期日の報告です! |
9月9日大阪高裁で、京都訴訟の控訴審第15回口頭弁論が開かれました。
抽選券配布が始まる前に、集まった原告と支援者で「公正な判決を求める署名」の第4回提出行動を行ないました。団体署名が21団体、個人署名が1982筆、これで累計は88団体、12883筆となりました。そのあと、いったん東門から歩道に出て、正門に向けて入廷行進を行ないました。
この日はコロナによる座席制限が解除されて傍聴席は83席でしたが、傍聴参加を訴える宣伝を控えたため、抽選券配布に集まった支援者は45名でした。
この日は被告側が主張・反論する番でしたが、プレゼンはなく、すぐに閉廷となりました。次回期日は12月7日(水)、次々回は来年3月2日(木)、いずれも14時半からです。
閉廷後、場所を中央公会堂の大会議室に移して、報告集会が開催されました。
以下、それぞれの発言要旨を事務局でまとめました。
●弁護団あいさつ(川中宏弁護団長)
前回期日は病気で欠席したが、今日までその間に最高裁の不当判決があった。原発事故の発生という不条理が、最高裁の不当な判決によってさらに不条理が高まった。先日、福島県いわき市に行く機会があった。楢葉町の宝鏡寺の早川住職はずっと原発と闘ってきた人だが、立命館大学の安斎育郎先生と共同で境内に伝言館を作って、原発の恐ろしさや危険性を伝える活動をされていた。そこに「原発悔恨・伝言の碑」があって、「原発は本性を剥き出し ふるさとの過去・現在・未来を奪った 人々に伝えたい 感性を研ぎ澄まし 知恵をふりしぼり 力を結び合わせて 不条理に立ち向かう勇気を!」とあった。私たちも、「感性を研ぎ澄まし 知恵をふりしぼり 力を結び合わせて」この困難を乗り越えましょう。
●支援する会共同代表・平信行さん(京都「被ばく二世・三世の会」世話人代表)
この原発賠償訴訟と合わせて、私たちは広島・長崎の皆さんが闘ってきた原爆症認定集団訴訟も応援してきた。最初の提訴が2003年だったので、足かけ20年になる。いま最後の原告が最高裁への上告中で、集団訴訟としてはほぼ終わりを迎えている。全国で450人を超える被爆者が原告になって闘ってきたが、勝訴した数が圧倒的に多くて、恐らく勝訴率は85%を超えるだろう。
裁判闘争は終わって行くが、私たちが求めていた基準の抜本的改定までは至っていない。核の被害者がいる限り、原発や核がある限り、私たちの運動が終わることはないというのが、原爆症認定集団訴訟に関わって来た皆さんの一致した思いだ。この原発賠償訴訟も変わらず応援していく。
〈弁護団報告〉
●田辺弁護士
最初に、今日の法廷でのやり取りを簡単に報告しておきたい。前回期日までに総論的な主張は出し切ったので、今日は主張は出していない。ただ、そのあとに最高裁の不当判決が出たので、これに対して原告側が何も言わない手はないと思っている。進行協議の場で、責任論については反論するという予告をしておいた。これについては、行政法の先生方に教えてもらいながら勉強会をやっているので、それが終わったところで書面として出したい。
本行(大阪大医学部名誉教授)証人について、東電が採用する必要はないという意見書を出した。本行先生は、放射線は他の発がん物質と複合的に作用するので、少しであっても被ばくはない方がいいということを分かりやすく説明しておられる。これに対して東電は、アンスケア(UNSCEAR、国連科学委員会と訳される)報告書も出ているしとか、一審で崎山比早子さんの証人尋問もやったしなどと言っている。法廷では、それに反論した。
研究者たち(本行先生もそのメンバー)が報告書の検証活動をやられた。報告書には科学的に見ておかしなことが沢山ある。例えば、日本人は昆布を沢山食べていて甲状腺にすでにヨウ素があるので、吸収率を半分にしたと書いているが、その根拠に使われた論文は1960年代のもので、それ以降日本人の食生活は随分変わっている。意図的に原発事故で取り込まれた放射性ヨウ素の量を減らそうとしている。一般の人が全部読むわけではないので、本行先生に訊こうじゃないかと言った。
もう1つ、東電の新「弁済の抗弁」というのがあって、要は払い過ぎになっているという主張だが、最高裁は受理せず判断しなかった。高裁は基本的に東電の主張を認めていない。ところが、国は東電の新「弁済の抗弁」を援用するかも知れないと半年くらい前から言っている。中間指針追補を決めた国が払い過ぎだと主張するのは問題なので、今日も国にそういう主張をするなら覚悟してやりなさいと警告しておいた。
(田辺弁護士がこのあと話した「最高裁判決をどう乗り越えるか」については別途報告します。)
●損害班・井関弁護士
今日、一審原告の本人尋問を申請した。堀江さん、福島さん、河本さんの3名。
控訴審での争点の1つは低額の慰謝料、2つめに避難の相当性が不当にも認められなかった原告さんがおられるので、これを認めさせること、それと先ほどの責任論。避難の相当性と損害論を裁判官にしっかり理解してもらうために3人の話を聞いてもらう。
まず堀江さんの長女さんと河本さんは避難の相当性が認められなかった。控訴審になって、土壌汚染や出荷制限など命と健康を守るための法律があるが、いくつもの法律に違反した状態が当時あったことを改めて主張している。そういうものに当てはめて、避難の相当性があったことを主張したいと考えている。損害論については、辻内先生や竹沢先生ほかの意見書を出して、総論的にはかなり主張・立証してきたが、それがこの3世帯の場合どうだったのか、ということをしっかり裁判官に聞いてもらう。3名の方は大変だろうけれども、弁護団としてサポートしていく。
●原告あいさつ
・堀江さん
本人尋問の1人に指名されて、今から責任を感じている。個人的にもいろいろスケジュールがあり、そこに本人尋問の準備が入って来ると、私の処理能力も衰えているので不安を感じているが、皆さんの期待に応えられるよう頑張る。
・齋藤さん
今日は若い学生さんも来られて、心強く感じている。昔も映像学部の学生さんが来たり、避難者のことを卒論にしたりする方もいて、裁判の力になるんじゃないかと思っていた。声上げるのは難しいけど、ちょっとでも目の前のことが進めばいいのかな、頑張り過ぎずに自分のペースで生きればいいのかなと思う。
・川崎さん
最高裁判決は衝撃的だったが、三浦判決(反対意見)が付いていたのは唯一の救いだったなと思っている。これを武器にして闘っていけたらという思いがあるが、各裁判所の裁判官が多数意見に同調した判決を出すんじゃないかという危機感もあって、京都訴訟も他の訴訟も精一杯頑張って勝利判決を積みあげて、今回の判決を覆して行かないといけないと思っている。
・菅野さん
私たちは集団訴訟を闘っているが、他の人の顔色を見たり、みんなどうしてるかなっていうので自分の方向性を決めるのではなく、自分はこうだからこうするんだっていう強い思い、熱い心を大切にして最後まで行きたいなって最近強く感じている。
子どもも自分自身も被ばくを恐れて京都に来た訳だけれども、今もこの時間も被ばくしながら働いてくださっている多くの方々がいる。その方たちを東電は人として見てないな、と感じている。
・河本さん
私も本人尋問の1人に選ばれてしまったので気が重い。私の場合は避難の権利も認められなかったので、内心「何でわからないの!」って思うんだけれど、なんとか認めてもらえるように考えて、頑張ろうと思うので、これからも応援してほしい。
・福島さん
6月17日の最高裁判決にはみんな心が折れそうになったと思うけど、あれは「反原発で闘ってきたことは正しかった」と思わせてくれた判決だった。
ひだんれんの交渉でわかったことだが、避難者数が意図的に減らされている。復興庁は家を持った人は避難者として勘定していないし、避難区域解除した区域の人を避難者とは認めない自治体もある。だけど、ここにいる私は避難者だ。これからも避難者としてやっていくので、力を貸してほしい。
・小林(雅)さん
6月の期日の時に、夫から肝臓の数値が高くてすぐ入院と言われたと連絡があり、頭が真っ白になったが、結局胆石が原因とわかり、7月に手術をした。その間何回も福島と京都を行ったり来たり。原発事故がなかったら何度も往復することもなかったし、それも事故の被害だと思っている。
最高裁判決の日、私は高木さんと最高裁前にいた。多数意見は、何をやってもどんな手立てをしても事故は起こるんだから国に責任はない、簡単に言うとそういうことだ。普通の思考回路だったら、国に責任があるのは当たり前だ。あんなアホな判決は絶対に覆さないといけない。
・萩原さん
ある時、下の子は「自立できてると思ってたけど、そうではなかったんだ」と気がつき、これからはどんな些細なことでも寄り添って生きていこうって心に決めた。でも、中学2年生の時に起立性調節障害と診断されて、学校に行かなくなり、朝晩のリズムが狂って、よけい体調が悪くなっていった。自分と家族の心身の健康のために、リンパドレナージュ、ゴッドハンドの整体の数々、ヒーリング、チャネリングまで習ったが、肝心の娘が受けてくれない。
その後もいろいろと学び続け、私の心を癒すことで娘の調子も良くなることを確信するようになった。そう気が付けたのは皆さまがさまざまな形で関わってくださったから。
・高木さん
小林さんと最高裁に行った時、「こんなことになったか」と悔しくて、「バカみたいな判決だな」と思ったけど、田辺先生が「心配することはない」とおっしゃったので少し安心した。
明日、奥森さんと話をすることになっていて、資料を作りながら11年間を振り返ってみると、いろんな人とつながる中で助けられて来たな、京都に避難して良かったなと思った。
ところで、コロナの状況の中でいろいろな給付金が出た。こんなにお金があったの、国には!と思った。原発事故当時、私たちは仕事が休みになっても給料の保障なんてなかったし、持続化給付金もなかったし、「なんで私らは、こんな苦しい思いをしなくちゃいけないの」と改めて思った。
(ZOOM参加の原告)
・明智(礼)さん
今はいわき市の実家に帰っているが、放射線を受け入れているわけではない。地元にいるのもこわい、京都は第二の故郷という感じだけど遠い、となると自分の居場所はどこなのかなあと考えてしまう。でも、原告の皆さんと繋がっていることが嬉しい。
私も京都の大学の大学院生で、京都の大学に進学することが決まっていた時に原発事故が起こり、私は自分の専攻を原発事故による被害や地域がどういう影響を受けたのかという方向に転換したが、京都で本来やりたかった勉強も思う存分やることができた。また皆さんに会いに大阪高裁に行きたい。
(国連特別報告者の訪日調査について)
・園田さん
京都訴訟の支援者の皆さんには、国連特別報告者ダマリ―さんの訪日調査が決まるまでも、また決まってからも応援してもらい感謝している。訪日調査が近づき、準備も進んでいる。まだ政府がドタキャンする可能性があるので、そうならないようにみんなで進めていきたい。訪日調査に当たって市民側から発生する経費を賄うためのカンパに協力いただいて、しっかりした調査をしてもらえるように頑張りたい。
・田辺弁護士
政府は、本当は特別報告者に来てほしくないと思っているだろう。だから3年以上放ったらかしになっていた。今でもキャンセルされるリスクはある。以前、デービッド・ケイさんという特別報告者の時も、2週間前に理由にならない理由でドタキャンしている。だから、本当に注意深くやっていかないといけない。10月7日に特別報告者の記者会見があるので、それまでは静かに見守ってほしい。市民サイドの声がちゃんと届くように準備をしているので、カンパをよろしくお願いしたい。
(会場でカンパ袋を回し、5万20円が集まりました。感謝)
【参加者の感想】
1 本日の期日はいかがでしたか?
・今日は傍聴席に入れました。参加者は少し少なかったけれど皆入れました。
2 期日報告集会はいかがでしたか
・医療について 被害の実際が分かり、認められるまでには被ばくについてもPTSDについても継続した調査が必要。
・最高裁判決ですが、がっかりしている場合じゃないと思いました。原告さんの怒りも感じました。
・田辺弁護士の解説がとてもよく分かりました。
・勝訴できるように頑張ります。平さん、川中先生、田辺先生のお話しが聞けて勇気づけられます。ありがとうございます。
・85%を超える勝訴率を長年の闘いで勝ち取っている原爆訴訟はこの原発の核の被害者の闘いにも勇気をもらえると思いました。それにしても息の長い闘いが必須なのですね。
・田辺先生の解説はいつもわかりやすく勉強になります。
3 原告に対する応援・激励メッセージ
・まだまだ先が長い(フクシマ被ばく被害を明らかにするには―また、治療を確立するには)ですが、がんばっていきましょう。
・まともな判決を勝ち取るために、共に頑張りましょう。
・久々にみなさんの元気なお顔と胸の内のお話しが聞けて良かったです。最後まで一緒に頑張ります。
・長い闘いの中で、強置くなって来られる原告の方々がすごいなといつも思わされます。せめて、裁判には必ず傍聴に来て、注目しているぞと少しでも思わせられたらと念じています。
・長い裁判ですが時々休みながら、期日などはしっかり団結して乗り切っていきましょう。
by shien_kyoto
| 2022-09-15 10:17
| 期日報告集会
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