2022年 03月 13日
3/11第13回期日後の記者会見の様子です! |
3月11日の第13回控訴審期日の後に開催した記者会見の様子です。
◆竹沢先生の報告
今回の記者会見は、最近、京都訴訟に提出された意見書と原告へのインタビューをまとめた『原発事故避難者はどう生きてきたか 被傷性の人類学』(東信堂)という本を出版された竹沢尚一郎先生(国立民族学博物館名誉教授)による避難者の精神的被害に関する報告から始まりました。( 報告の要点を事務局の責任でまとめました。)

・京都訴訟原告の精神的苦痛の大きさを証明するためにアンケートを実施したところ、PTSD(心的外傷後ストレス障害)のハイリスク者の割合が、成人で55・9%、避難当時7~18歳の未成年者で52・2%だった。これは極めて高い数値だ。
・アンケートにより、社会的孤立、経済的困難、身体的異変、人間関係上の困難の順に、PTSDのリスクが高いことがわ
・トラウマを経験した全員がPTSDになるわけではない。①社会的支援がない場合、②日常的にストレスにさらされている場合に、なりやすいことが確認されている。上の4つの要因は、資金援助や医療保障などの社会的支援が十分にあれば解消できたはずだ。
・住宅の無償提供で、京都でも国家公務員住宅を中心に一定のコミュニティが形成されていたが、住宅支援の打ち切りにより避難者は孤立を強いられ、PTSDの危険に晒された。
◆原告・避難者の訴え
そのあと、法廷で意見陳述した川崎さん、午前中のお話し会で「語り部」を務めた二人、そして裁判に参加した原告が一人ずつ訴えたいことや思いを語りました。
◇川崎さん
事故から11年経って、子どもたちは自立する歳を迎えていて、寂しいなという気持ちが正直あります。放射性物質から子どもを守るために避難したんですが、我が家の場合は長男が戻ってしまって、長男と夫は茨城、次男と長女と私はこちらに居るので、私は長男の成長を見守ることができないまま、もう成人になってしまいましたし、夫は下の娘と次男を見ないまま大きくなってしまったなあと電話でよく話します。避難は継続することができたけれども、家族一緒に過ごす時間を失ってしまったので、もう取り戻せないなという思いがあります。これから子どもたちが自立して、私はどうなるんだろうという思いもあります。人生で一番大切な時間を失くしてしまったというか、そういう空虚な気持ちがあります。東電や国の言い分がまかり通るような、そういう在り方を変えなければ、こういう思いをして終わるのでは嫌だなと思っているので、なんとか変えていくためにこの裁判に勝ちたいという思いを新たにしています。

◇小林茉莉子さん
震災当時は10歳という未成年で、いまは成人を迎えました。私の方から伝えたいことですが、今日の裁判を聞いていて、絶対起きてほしくないことですが、仮に世界のどこかで原発が爆発して、放射能が放出された時に、先例となるフクシマ事故で、国に責任を負わせることができなければ、未来の子どもたちや人を苦しめることになると思います。なので、私は原告ではないですけど国に責任を認めさせたい、勝ちたいなあと思います。ひと言で気持ちを申し上げると、これから先、原発事故によって貴重な子ども時代を奪われるような子どもが出て来てほしくないというのが私の願いです。

◇明智礼華さん
国と東京電力とよく言われていますが、東京電力だけの責任のわけがないだろう、国が携わっていないわけがないだろうと思っていて、自分が生まれ育った国を訴えることは悲しいけれども、やはり将来の人たちに同じ思いをしてほしくない。いま放射能によって命を奪われている人たち、苦しい思いをしている人たちに心を寄せたいと思っています。

◇H・Mさん
今日は3・11、事故から11年ということで、注目してほしい日ではありますが、私としては複雑な気持ちを抱えたままです。福島で一緒に働いていた、私より10歳くらい若い人が岩手県宮古市田老地区で津波により亡くなりました。ずっと赤ちゃんが欲しいと思っていて、ようやく赤ちゃんが生まれて10日間しかママになれなかった。
その彼女を思うと今でも涙が出る思いです。だから、3月11日は静かに過ごしていました。
竹沢先生から社会的孤立という話がありましたが、自分のことを振り返ってみた時に、子どもが高校生、大学生になるところで、本当にお金がかかる時期だったので、仕事を選ぶこともできずに、なんとか育てあげなければという思いで働いてきました。京都での生活や仕事に慣れることに必死だったと思います。
その中で、自分の本音を誰かに言いたいけど、誰にも言えない。家に帰っても、上の娘は社会人でしたから、その子にも本音を言えない。そんな時に「とても孤独だなあ」と感じていたことを思い出します。でも、そんな時に支援者の方、事務局の方がよく支えてくださったから、いままで頑張ってこれたかなと思います。
当時どう思ってたのかと子どもたちに訊いても茶化して答えるので、本音を聞けていません。きっと上の娘は心配をかけまいとしてきたと思いますが、小林さんや明智さんのように自分の思いを発信していってくれたらいいなと思いますし、若い人たちに自分の体験や考えたことを伝えていってほしいと思った一日でした。
◇H・Yさん
午前中は小林さん、明智さんの話を聞き、前向きな姿勢に心を打たれました。そして、これから伝えていきたいという言葉に希望を頂きました。
福島では三世帯住宅に住んでいました。でも福島の家は処分してしまいました。父が42年くらい経つ家に住んでいます。私たちが避難してから、水道が壊れた、雨漏りがしてる、床が抜けてるって言われて、本当だったら三世帯で百年以上住めるような家だったのに、直してあげる経済力がないと思うととてもつらいです。いろんな事情がありますけども、それでもこうやって歩んでこれたのは、心を寄せてくださる皆さまのお蔭だと感謝しています。
◇K・Mさん
茉莉子の母です。
3・11は、ここ何年かは神戸の東遊園地で神戸の方と一緒に黙とうして過ごしていました。今年は原発賠償訴訟の期日ということで、裁判に参加をしました。私がなぜ原告になったかというと、私は第3次提訴でしたが、福島では娘が生まれてからほぼ10年間家に居ました、専業主婦で。避難してから、二重生活で大変なのでフルタイムで働き始めました。でも毎日の生活に追われて、疲れていて集会などに出て行く気力もなかったんですね。やっと生活のペースができた時に裁判のことを聞いて、国と東電に謝ってほしいという思いがあって原告になりました。最初は謝ってほしいという憤りから裁判を始めたんですけど、最近は、私たちのように原発事故、他の被災でも同じですが、酷い目にあった人間がちゃんと暮らしていけるように、つらい思いをしないように、私たちは闘っているんだなって思っています。そうだなって強く思うようになったのは、阪神淡路大震災で被災され、被災者生活支援法案のために頑張られた方にいつも励まされていて、私たち桃山に避難した者は赤十字から冷蔵庫とか電子レンジとか生活用品を一式贈られたんですが、それは阪神淡路大震災の時に頑張ってくれた人たちのお蔭でそういう支援を受けることができたんです。
私たちも、次に何か原発事故や災害の時に私たちみたいにPTSDにならないように生活がすぐに再建できるように、権利をかちとっていかなければいけないと思います。
最後に、これはおしどりマコさんの受け売りですが、「私が権利を守ることは、あなたの権利を守ること」という言葉を胸にこれから裁判を 闘っていきたいと思います。
◇T・Kさん
仕事の関係もあって、本当に久しぶりの参加になります。コロナ対応の仕事をしていますが、コロナの感染状況が福島原発事故当時の状況に似たようなところもありまして、相談に来られた住民の方のお話を聞くたびにこちらが切なくなって、できる限りの支援を自分なりにして来たつもりです。
皆さんには言ってなかったんですけど、2年前から福祉の勉強をしていました。子どもたちが二十歳を過ぎたので、今後の自分の行き方を考えて、早めにできることはしておきたいと思ってのことでした。みんなが仲良くしてくれて、避難者以外に京都の友だちができました。勉強してきたことを福祉の方で生かしていけたらなと思っています。
今日の裁判を傍聴席から見させてもらって、国と東電の小さな声に「私たち勝ってるじゃん」って、何の根拠もないんですけど、勢いが違うなというのを感じました。今日また皆さんとお会いできたことで、「よしっ、また次のステップ、頑張ろう」という気になりました。
子どもたちがお話しをするのを見て、頼もしいなって思いました。この子たちが居たから私たちは頑張って来れました。だから、これから声をあげていく子どもたちに大きな責任を負わせるようなことはしたくないので、みなさんも一緒に手伝ってもらえたらと嬉しいです。
◇K・Kさん
私の願いは、事故の責任を取って謝ってもらうことです。
午前中は家でZOOMで聞いてましたが、(明智さんからの)「なんで支援してくれるのか」という質問に、梅谷さんが「困っている人を放っとけない」と言ったのを聞いて、やっぱ家で見てちゃいけないなと思って、出てきました。
葛藤して大変な思いをして避難してきたので、入廷行動とか記者会見とか気が重いなと思い、ZOOMで参加しようと思っていたんですけど、来てよかったなと思います。梅谷さんや皆さん、支援してくださる方は本当にありがたいなって思いました。

このあと予定していた報告集会は時間がなくなり、会場およびZOOMで参加頂いている他訴訟の原告などから連帯の挨拶を受け、閉会しました。
by shien_kyoto
| 2022-03-13 00:00
| イベント報告
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