2021年 12月 17日
12月16日に行なわれた控訴審第12回期日の報告です。 |
12月16日、原発賠償京都訴訟の控訴審第12回口頭弁論が開かれました。
この日は12時半から淀屋橋南詰で、5名の原告と支援者10数名が参加して、チラシを配り、マイクで訴え、署名を呼びかけました。通行する人たちはみな急ぎ足で通り過ぎ、チラシを受け取る人も少なかったですが、それでも何人かの方はチラシを受け取ってくれ、中には立ち止まって署名してくれる人もいました。

13時で街宣行動を終え、そのあと原告5名と支援者3人とで大阪高裁の民事第12部書記官室に署名を提出しに行きました。提出した署名は35の団体署名と2031筆の個人署名でした。

今回もコロナの影響で傍聴席は39席に制限されましたが、傍聴券を求めて並んだのは45名で、久びさの抽選となりました。
法廷では、原告側が①準備書面(42)高松高裁判決の妥当性―責任論に関して(森田基彦弁護士)、②準備書面(43)国際人権法に関する総括書面(高木野衣弁護士)、③準備書面(44)低線量被ばくの危険性―本行補充意見書(鈴木順子弁護士)の3つのプレゼンが行なわれました。
今後の期日については、3月11日(金)、6月8日(水)と決まりました。開廷時刻はいずれも14時30分です。
閉廷後、中央公会堂で報告集会が持たれ、会場で48名、ZOOMで30名が参加しました。報告集会は長時間におよび、多岐にわたる内容が報告されましたが、そのすべてを紹介すると膨大になりすぎるため、ここでは京都訴訟に関連する発言にしぼって、その要点を紹介します。
〈あいさつ〉

控訴審も長くなっているが、国と東電を確実に追い詰めている。東電は自分たちの責任を忘れて、避難者はわずかだとか、いつまでも避難を続けていると故郷の人たちは迷惑に思っているなど、とんでもないことを主張し出している。次の期日は11年目の3・11に決まった。来年はさらに追い詰めて行きたい。

◆橋本宏一・支援する会共同代表
弁護団のプレゼンを聞いて、この裁判の意味、原告の思いという原点に自分が立ち返ったような気がした。鈴木順子弁護士の100人に1人の確率で害が発生するとして、その1人は私かも知れない、100人に1人だから無視してもいいのかという言葉に胸を打たれた。その1人は私かも知れないという想像力がこの裁判を闘う力ではないだろうか。
裁判官にも、想像力を働かせて、避難した原告の思いや事情を汲み取って判決を書いてもらいたい。皆さんも、ぜひ傍聴して感じたことなどを(1人用署名の)メッセージ欄に書いて、裁判官に届けてほしい。

〈弁護団から〉
◆田辺保雄・弁護団事務局長
提訴してから8年目になるが、控訴審も大詰めに来ている。
ICRPの勧告に従っておれば大丈夫だという政府のシナリオに裁判所もすっかり騙されている。ICRPは専門家集団ではあるが、核開発のお墨付きを与えるために活動して来ているのが実態で、原発事故のリスクを福島県とその近辺に全部押し付けてしまうのがICRPの考え方だ。
そのことを裁判所に伝えて行く必要がある。今日の国際人権法のプレゼンもそのためだった。

◆森田基彦弁護士
今回は高松高裁判決を引用する書類を作成した。この判決は理論的にもすっきりしているし、原告側の資料の弱さを補うという意味でもいい判断を示している点で、参考にしてほしい判決だ。
同判決は防潮堤を正面から認めており、責任論に関してはこれでほぼ固まったのではないかと弁護団の全国会議でも言われている。
今後は、防潮堤に関して補充したいのと他の裁判などで出てきている証拠を使って東電の過失を追及できないかと考えている。

◆高木野衣弁護士
今日のプレゼンで、国連特別報告者のグローバーさんやトゥンジャクさんに代表される国際社会の眼から見ると、年間1㍉㏜という基準が非常に重要だということが理解してもらえたのではないか。
そして健康に対する権利というと、健康であるのかないのかに目を奪われがちだが、健康を守るために避難する権利を基礎づけることを主張したものだった。
1㍉㏜という基準があったのにそれを20㍉㏜に高めてしまった。これは社会権規約の後退禁止原則に反しているし、他が1㍉㏜なのに福島だけ20㍉㏜と基準を変えてよいのか(差別的取り扱い)という問題もある。そういう面にも裁判所は目を向けてほしいという思いで提出した。
〈署名提出報告〉

◆支援事務局・上野
先ほど映像で観てもらったが、今日12時半から淀屋橋南詰で署名活動をして、そのあと裁判所に対して1回目の署名提出を行なった。内訳は、35団体の団体署名と2031筆の個人署名。
佐賀の玄海原発差し止め訴訟の原告団から1人用の署名を4千枚送ってほしいという連絡があり、送ったものがぼちぼち返って来ている。せっかく書いて頂いたものをそのまま提出するのはもったいないので、次の会報で紹介しようかと考えている。また、関西よつ葉連絡会に5名連記の署名用紙を3万5千枚送っている。次の期日には、今日を大幅に上回る数の署名を提出したい。

〈参加原告から〉
◇いま追加の陳述書を書いている。東電は、領収書が添付 されていないので支払いは認められないなどと言っている。避難当時は体調が悪く、ちゃんと計算もできないと思ったので、ADRは申請しなかった。ADRでは領収書がなくても認められたということや、集団訴訟なのでそんな面倒な計算は自分でやらなくていいと聞いたので、裁判を続けてきた。でも、ここに来て、根拠がないものはどうのこうのと言われて、なんとも言えない心況になった。一方、避難当初は出会う人を見るのもつらかったが、今では心から笑うこともできるようになった。皆さんのお蔭だ。
◇今日、署名活動に参加して、チラシを受け取ってもらえないと思っていたが、受け取ってくれる人もいた。仲間と「やっぱり、飴ちゃんをくっつけた方がいいね」という話をした。今は人と比べるんじゃなくて、自分との闘いなんだと思って生活している。避難者の支援の仕事をしていて、みんないろんな事情を抱えながら前を向いている人が沢山いる。そういう人のためにも頑張らなきゃと思って、今日も参加した。
◇各地で集団訴訟が進み、4つの控訴審判決が出て最高裁に移行している。
区域外避難者については、賠償額はかながわ訴訟が一番高く、避難が認められた期間の長さでは京都訴訟が一番長い。それでも私たちは不服だ。だから、この裁判で言い尽くしたかどうかを考えながら、あと1年少し頑張って行きたい。
◇今日は淀屋橋で街頭宣伝と署名をやった。マイクを持って「私たちの裁判の勝利が皆さんの権利を守ることにつながる」と叫んでいたが、なかなか届かなったのかな。1人でもいいから、自分の思いが届けばいいなと思った。特に区域外避難者に対する世間の風当たりは冷たくて、声を上げたらバッシングされたりする。バッシングする人も、私たちの立場に置かれたらどうするかを考えてもらいたい。
◇私も署名活動に参加した。中には、自転車を降りて署名してくれる人もいた。そのあと裁判所に署名提出に行った時に、東電の代理人が居て、目が合ったとたん、ぎょっとしたような顔をしたので、「結構、私たち、追い詰めてるのかな」と思った。
法廷の原告席に高校3年生が参加していて、「小学生だった子がこんな娘さんに成長したんだ」と感慨深く、私たちの代でできるところまで頑張らなくちゃという思いを強くした。
◇私も淀屋橋での署名活動に参加して、ここではチラシを受け取ってくれる人も署名をしてくれる人もいないと思ってやっていたが、今風の「あざ~す」みたいな喋り方の若いお兄さんが署名をしてくれて、最後に「頑張ってください」と声をかけてくれたので、嬉しく感じて、あきらめずに頑張っていかないといけないと思った。
◇(ZOOMで)現在、田辺先生と国内避難民の権利に関する国連特別報告者の訪日を実現する活動をやっているが、先週の金曜日に臨時国会で特別報告者の訪日要請はどうなっているのかという代表質問が実現した。岸田首相は「今なお避難されている方は避難生活の長期化による状況が多様化しており、それぞれの状況に応じた丁寧な支援を行なっていかなければならない」と答弁した。その言葉どおりにしてもらうために頑張っていきたい。
◇(ZOOMで)私は家族の事情で福島県の実家に帰っているので、こうしてオンラインで皆さんと繋がっているのが心の支えになっている。
今日は福島から魂をと飛ばしているが、かなりを相手を追い詰めているということなので、これからも魂を飛ばし続けて皆さんと一緒に頑張っていきたい。
このあと、ZOOMで参加された千葉訴訟原告の瀬尾さん、子ども脱被ばく裁判原告団長の今野さん、会場参加のジャーナリスト守田敏也さんなど多くの方が発言されました。
●期日報告集会の感想から
1 本日の口頭弁論期日(模擬法廷)はいかがでしたか?
・公衆被曝は1ミリシ-ベルト(年間)の基準があるのに、福島原発事故被災地では20ミリシーベルトに引き上げられていることは、ダブルスタンダードであり、認められないと改めて思いました。
・久しぶりに傍聴させて頂きました。(弁論は)むずかしい説明でしたが、高松高裁判決のこともわかり、参加して良かったなと思いました。
・原発再稼働にあたって、本来守るべき法律を充分に理解しないまましてきたこと、自然災害への備えもおろそかで、常に楽観的な態度であったことが明らかになった。事故後の対応も当然のことながら、リスクベネフィットが先行し、個々人の人生や権利をおろそかにしてきたことは明らか。グローバー報告を再度読んでみたいと考えています。
・正直、やりとりされる発言、ことば、論理はなかなか難しいですが、公正な裁判が出る為には国民がこれだけ関心を持っていると見せるのが大切と出席しています。
・原告弁護団の力作文・主張、良かったです。
・弁護士(女性の方)の弁論が早口すぎてついていけません。
2 期日報告集会はいかがでしたか?
・弁論要旨を事前に配布していただき、とても助かりました。
・「私たちの裁判が勝利することが、みなさんの権利を守ることになります」と呼びかけて街頭行動をしたと言われた原告の方のおはなし、その通りだと思いました。全国各地の原発賠償訴訟で東電と国を追いつめていっているのだと思いました。
・原告の方の生のお話を伺えてよかったです。
・個々の人生は個々のものであり、集団のものではないことを改めて認識しました。個々が抱えざるを得ないリスクを再度検討したいと思います(自分の事として)。
・裁判がいまどんな段階なのかが分かり、有益です。
・いろいろな方からの発言はとても良い。原告の発言には一言一言に感無量になります。
3 原告に対する応援・激励メッセージをお願いします!
・被ばく被害はないとする国に対して本行さんの意見書、国連人権理事会の勧告など貴重な意見書が提出されました。裁判所がしっかり耳を傾けてくれることを期待します。黒い雨の原告の闘いも、この裁判に取り入れてほしいです。生き証人ですから。
・お疲れさまです。今、福井の原発事故が起こったら、北風に乗って放射性物質が飛んでくる…と思いながら、淀屋橋でチラシ配っていました。ほんと、ひとごとじゃないです。共にがんばりましょう!
・あなたたちの存在は、私にとって、現実とたたかう力です。いつも、ありがとう。
・国、東電は自らがすすめてきた原発でとてつもなく大きな事故を起こしてきたにも拘らず、必要な支援がとられず、責任もとっていません。むしろ被災者に冷たい対応をしています。このような状況の中、声を上げ続けておられる原告のみなさんが闘っておられる裁判は、私たち自身の裁判だと思います。
・本当に大変な裁判を続けられているご努力、ご苦労に敬意を表します。ありがとうございます。移住者の代表として、闘い続けて下さっていると思っています。
・事故から10年以上経ち、しかし被告は確実に追いつめられていることを希望にしたい。
・困難を抱えながらも、頑張られている姿を見るたび、訴えられる声を聞くたび、心がゆさぶられます。勝利を勝ち取られるよう心から願っています。
・微力ですが、続けて支援しつづけます。
・原告、避難者の方々、ご苦労さまです。つながり合い、連帯されている闘い、もっと聞きたかったです。
by shien_kyoto
| 2021-12-17 00:00
| 控訴審期日
|
Comments(0)