2021年 07月 09日
第10回控訴審(大阪高裁)期日の報告です! |
みなさま
原発賠償訴訟・京都原告団を支援する会事務局の上野です。
6月17日は、京都訴訟の控訴審第10回期日でした。その報告です。長文、重複、ご容赦ください。
緊急事態宣言が続く中、今回は支援者の方にはオンライン模擬法廷への参加を呼びかけたので、原告が裁判所正門に到着した時点で待っていてくれた支援者はわずかでした。原告の入廷行進も行なわず、正門前で支援者も一緒に写真撮影し、敷地内に入りました。抽選には至らず、全員が法廷に入ることができました。
法廷では、原告側が2つのプレゼンを行ないました。1つは、予見可能性をめぐって国の反論への再反論(森田基彦弁護士)、もう1つは損害に関する東電の主張への反論(和田浩弁護士)でした。要旨は後段にまとめて載せています。
次回は9月30日(木)、次々回は12月16日(木)、時刻はいずれも14時30分からとなりました。
今回は、会場の関係やコロナの影響も考えて報告集会は行なわないことにしましたが、閉廷後、裁判所の向かいの公園でまとめの集会を持ちました。

この中で、弁護団事務局長の田辺弁護士から「期日はあと2回では終わらない。3回はやることになるだろう」と、今後の裁判の進行の見通しが述べられました。
原告団からは共同代表の萩原さんがお礼と引き続いての支援を訴えて、散会しました。
オンライン模擬法廷には30数名が参加し、まとめ集会の様子もライブ中継されました。また、遠方に在住している原告さんが発言したり、他訴訟の支援者からの告知なども行なわれました。
【プレゼンの要旨】
原告側の2つのプレゼンの要旨を事務局の責任でまとめました。
◆予見可能性に関する再反論(森田基彦弁護士)
見可能性に関する争点は、三陸沖北部から房総沖の海溝寄りを一体の領域とするか、南北で異なるかというもの。
国は、○津波地震は特定の領域で発生する、○福島沖でM8地震の可能性は低い、○津波評価技術は当時の科学的知見を踏まえていることを理由として、三陸沖と福島県の海溝寄り領域を同一とする科学的知見は皆無であったと主張している。
だが1980年頃から、日本海溝寄り領域では最大M8クラスの地震を想定する区分図が公表されていた。表俊一郎教授による「表(おもて)マップ」では日本海溝寄りでM8の地震を想定しており、活断層研究会(現在の一般社団法人・日本活断層学会)による活断層マップでは日本海溝寄りを一体とみている。
国が南北に区分する主要な理由は、南北で海底の構造が異なる、堆積物(付加体)の形状が異なるというものだが、2002年には津波地震は付加体のある所でもない所でも発生していることが知られていた。津波地震の発生と付加体の有無は因果関係があるわけではない。
国が主張の根拠として取り上げる佐竹健治教授も、津波地震については結局のところ「海溝沿いにはどこで起きるかわからない」と結論づけている。
また、推進本部の海溝型分科会委員で気象研究所地震火山研究部長(当時)の濱田信生氏は、東電株主代表訴訟において、次のように証言した。「海溝型分科会の委員は、三陸沖北部から房総沖の南北で海底地形が異なるという知識は有していた」「しかしながら、海底地形が津波地震の発生の有無に結びつくか否かについては議論しても意味がないと思っていたため、取り上げられなかった」「それが結びつくというのは学問的なアイデア、仮説であって、そのまま長期評価には採用できなかった」
委員である地震学者たちの何名かは付加体の仮説を述べていたが、行政的な評価として採用できる程度には至っていなかったということだ。電気事業者らの連絡会の議事録(2008年3月5日)でも、南北に分ける根拠となる「萩原区分」の裏付けを得られなかったと書かれている。南北に分けたいという強い動機があったにも拘らず、その根拠が見つからなかったのだ。
以上をまとめると、○津波地震を付加体により説明する学説は仮説にとどまる、○長期評価における議論でも、南北一体と捉える見解が有力な地震学者たちの最大公約数的けんかいであった。
次に、原告側の濱田意見書が引用している金森博雄・カリフォルニア工科大学教授の論文の主旨は、宮城県沖やその南の福島県沖・茨城県沖でも、沈み込む太平洋プレートに陸寄りの北米プレートがぴったりくっついており、ひずみは解放されずにどんどん蓄積されており、過去の地震のすべりにより解放されたのはそのうちの4分の1だけである、というもの。
そして解放されなかった4分の3は、「①GPS解析によって捉えられない非震性の滑りとして解消されるか、②最終的には、巨大地震、あるいは巨大津波地震、または巨大サイレント地震として解消される」として、この領域における巨大地震の発生を予期する内容になっている。この金森論文からも長期評価の合理性が裏付けられる。
最後に、日本原電およびJAEA(日本原子力研究開発機構)が長期評価に基づいて津波対策を行なっていたという原告の主張に対する国の反論への再反論を行なう。
国の反論は、原電とJAEAが行なった津波の試算は、「長期評価の見解に客観的かつ合理的根拠が伴うか否かを前提とせずに実施された」というもの。関東以北の電気事業者らが2007年12月19日に行なった情報連絡会の議事録には、JAEAは「推本は扱わなくてよい方向にしたいが、具体的に推本を否定する材料は現状ない」と述べたとあり、原電も「推本の扱いについては…社内的にも議論しているところであり、BC(バックチェック)で扱わざるを得ないという方向で進んでいる。…福島県沖・茨城県沖については推本で津波地震が発生する可能性が指摘されており、念のためこの知見を取り込むということも考えられる」と発言している。
2008年7月23日の議事録では、原電は「推本の『領域内でどこでも発生する可能性がある』という考え方は取り入れるとしても、三陸沖モデルを動かすのではなく、房総沖モデルを動かすシナリオで(有識者に)相談する」と述べ、JAEAは「推本モデルの結果に対して、建家ごとに防潮壁で囲う、防水扉に変更する等の対策を検討している」と述べている。
原電とJAEAは長期評価の合理性を認め、採用した(否定できなかった)ということができる。また、この検討は耐震バックチェックを契機としてなされたものであり、自主的な取り組みとは言えない。
◆損害に対する東電の主張への反論(和田浩弁護士)
東電は、原告が主張する精神的損害はもっぱら放射線作用に対する主観的な「不安感」に基づくものとし、複数の裁判例を引用して、「法律上保護される利益」に対する違法な侵害が認められるためには、「社会通念上受忍すべき限度を超えた」侵害である必要がある(受忍限度論)と主張する。
まず原告らの権利は「包括的生活利益としての平穏生活権」(生存権、身体的・精神的人格権、財産権が包摂される)であり、主観的な「不安感」とは異なる。
不法行為法における受忍限度判断は、加害者側の権利・自由と被害者側の権利・自由を調整するために用いられる原理である。加害行為自体が加害者側の権利・自由の埒外である場合には、受忍限度判断は用いられない。本件における東電の加害行為は原発事故を発生させたことであり、これが東電の権利・自由の埒外であることは明らか。本件において、受忍限度判断が採用されるべきではない。
東電が引用する大阪国際空港事件上告審判決は、社会にとって公共性・公益性のある大阪国際空港の正常な運用・供用等により生じた被害が問題となったもの。
東電があげる受忍限度判断が採用された判例・裁判例と本件とはまったく事案が異なっている。
そもそも本件は、加害者側の権利・自由と被害者側の権利・自由の調整が必要になる事案ではないため、受忍限度判断は用いられるべきではない。
東電はまた、過去の生活妨害の裁判例と対比して、自主賠償基準を超える損害がないと主張している。本件事故による被侵害権利は、包括的生活利益としての平穏生活権および人格発達権であり、東電が引用する判例・裁判例における権利侵害実態とは異なり、かつ、その精神的苦痛は格段に大きい。
東電は、自主的避難等対象区域を含む避難指示区域外においては、「法律上保護される利益」に対する違法な侵害があったとは認められないと主張する。
具体的には、年間積算線量が20ミリシーベルト相当値に達していないこと、年間積算線量100ミリシーベルト以下の被ばく線量であれば健康への影響は認められないこと、年間積算線量20ミリシーベルト以下の被ばく線量であれば、発がんリスクは実質的に無視し得ることを理由に「同区域における放射線の作用による侵害の程度は極めて低い」と結論づける。
しかし、年20ミリシーベルトという参考レベルは、ICRP2007年勧告に基づく緊急時被ばく状況の下限、現存被ばく状況における上限だが、いずれも「最適化」という観点から設定されたもの。ICRPは、その成立経緯に照らせば、純粋に学術的立場に立つのではなく政治的存在である。ICRPにおける放射線防護の考え方は、純粋に人の生命、健康という観点ではなく、社会的・経済的要因を優先している。
また参考レベルは、放射線量を低下させるため、あくまで行政や原子力事業者を名宛て人として設定されたものであり、地域住民が甘受すべきものとして勧告されたものではない。
東電の主張を文字通り読めば、年間積算線量100ミリシーベルトが継続しても健康影響がないかのように理解されるが、毎年100ミリシーベルトを被ばくした場合に健康影響が出るということに科学的争いはない。LNTモデルは被ばくによる人体への影響にはしきい値がない、つまりわずかな追加的被ばくであっても回避されるべきことを大前提としている。公衆の被ばく限度(年間1ミリシーベルト)でさえ「容認」しても良いとする趣旨にすぎず、安全の基準ではない。東電の主張は、人の健康に対する傲慢な企業体質を如実に示しており、強い非難に値する。
東電は、自主的避難等対象区域の居住者であった原告らには賠償すべき損害が生じたとは認められないと主張する。
これは、①原賠審の示した中間指針追補等に反しており、②中間指針追補が賠償の範囲としなかった県南地域についても賠償に応じてきたという先行行為にも反している。
他方、東電は原子力損害賠償・廃炉等支援機構に資金援助の申請を行ない、これによって得られた資金に基づいて賠償を行なっている。そこで、東電は申請の際、自主的避難等対象区域および県南の住民らへの支払いに要する資金を控除して要賠償額を算定したのか否かを明らかにすべきだ。
by shien_kyoto
| 2021-07-09 16:47
| 期日
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