2020年 02月 29日
第6回控訴審期日 報告集会の報告 |
第6回控訴審期日 報告集会の報告
第6回期日閉廷後、場所を三共梅田ビルの貸会議室に移して、報告集会が開催されました。
新型コロナウイルスの感染が拡大しているため、支援する会のスタッフが、報告集会の会場となる会議室の扉、机、いすなどの除菌作業を行い、参加者にはマスク着用とアルコール消毒をお願いしました。
ご協力いただいたみなさま、大変ありがとうございました。
川中弁護団長、支援する会の石田紀郎共同代表のあいさつの後、陳述書に基づく意見書を書かれた竹沢尚一郎さん(国立民族学博物館名誉教授)がこれまでの経過と意見書の狙いについて発言されました。
● 竹沢尚一郎さんのコメント
・もともと、ひょうご訴訟団主催の勉強会で、新潟訴訟で意見書を出された宇都宮大学の高橋若菜先生の話を聞かれた井関弁護士から京都でもこういう意見書を作れないだろうかと相談を受け、気安く引き受けたが、実際の作業に入ると予想した以上に大変だった。
・新潟の場合は事前に項目を決めて原告が陳述書を書いたが、京都の場合は陳述書がそれぞればらばらだったので、新潟の陳述書の項目を参考に項目を設定し、陳述書から各項目を埋めていき、空白の項目について各世帯ごとに埋めてもらった。回収率が100%というのは例外的な高さで、原告の強い思いと弁護団との信頼関係を感じた。裁判官にも伝わったのではないか。
・分析してみて読み取れたのは、事故後の大混乱の状況。情報も混乱していた。アメリカは80キロ圏内からの避難を勧告。何を信用していいかわからない。ネットを調べたり、講演会に行ったりして、自分で情報を集めた。その上で避難を選択したのは合理的な判断だった。やむにやまれぬ選択であり、自分と子どもたちを守る正当な行為だった。
・避難後はどういう困難に直面したのか。精神的苦痛、経済的困窮、子どものいじめ、人間関係の困難、社会的孤立、身体的異変、いつまで避難が続くのかという将来への不安など。子ども被災者支援法が成立したにもかかわらず、施策に生かされていない。中間指針による賠償も避難の実情には合っていない。そういうことを強調した。
・5月の弁論期日には、国際的にPTSD検査に使われているアンケートを分析した意見書を提出する。
● 弁護団から
次に、弁護団からプレゼンの補足発言がありました。
〈森田弁護士〉
・東電刑事裁判で、体調が悪くて本人尋問されなかった山下和彦(東電幹部)の供述調書と膨大な添付書類が出てきて、これは使えると思った。
・興味深かったのは、文系出身の経営トップと理系の現場技術者との間には意識のズレがあったこと。経営陣は、津波高が表に出て原子炉を止めろということになったら、経営収支が悪化するということで、長期評価を取り入れないことを決めるが、土木調査グループの高尾氏はGMになると、各技術グループを集めてワーキンググループを作り、津波対策検討会を始めている。
・今日、国から百ページの準備書面が出された。結果回避可能性について長々と書いてある。今後、それに反論していく。
〈白土弁護士〉
・今日のプレゼンの位置付けだが、高裁になると生の原告の証言を聞いていないので、苦労して作った陳述書を一度裁判官に見直してもらうという意味はあったのではないか。
・今回の意見書は、竹沢先生も紹介された勉強会に出られた井関弁護士が、新潟訴訟の意見書について「これはすごい、大きなツールになるのではないか」と熱っぽく語られたのが、きっかけだった。
・それが可能になったのは、支援スタッフに竹沢先生や今は福岡にいらっしゃる伊東先生がおられたお蔭だ。陳述書を全部読み、足りない項目を原告に埋めてもらい、それをまたすべて読んで意見書をまとめる。大変な作業だったと思う。
・PTSDについても取り組んでもらっている。裁判官にもバイアスがかかっていると思うが、原告の声や置かれた状態を届けることで、突破していきたい。
● 原告の感想・決意
ここで、裁判に参加した14名の原告のうち、引き続き報告集会に参加した6名の原告から挨拶がありました。発言要旨は以下のとおり(みなさんマスクをしたまま喋っており、聞き取りにくい人もあったので、十分に伝えきれなかった人はごめんなさい)。
・今日は、新型コロナウィルス騒動の中、おいでくださり、ありがとうございました。「来てください」と呼びかけるのもどうなだろうと悩みながらメールを流した。アンケートですが、答えるのが難しいと感じながら答えたが、自分たちのことが目に見える形になって良かったと思う。
・最近疲れがたまり易くて、今日も朝起きた時、「なんか気が重いなあ。行きたくないなあ」と思っていたところへ、関西訴訟の原告の方から「今日、頑張ってね」というメールが来て、「支援の方も来てくれるんだから、やっぱり行かなきゃ」という気になって来た。そして、「来て良かった」と本当に思った。アンケートをこういう形でまとめてもらって良かったと思っている。3月7日に京都の向島地区で7回目のキャンドルを点灯する。中止の予定はないので、ぜひ来てほしい。
・すばらしいプレゼンだった。可視化されて、裁判官の心に届くように願っている。コロナ騒動が原発直後のこととすごく重なってしまう。森松さんの「ノー・カウント戦法」というキャッチコピーを借りると、「調べない、知らせない、助けない」「調べない、数えない、助けない」というのが国のやり方だ。娘が韓国に行って来たんだけど、韓国では検査もしてるし、消毒もしてて、娘が食堂でご飯を食べてたら、いきなり消毒しに入って来たそうで、国民の命を守る姿勢が全然違うなと思った。
・コロナウィルス問題で韓国などの対応との違いを感じて、裁判には絶対勝ってやるという気持ちになった。
・本当に「あの時と一緒じゃん」って感じる。
・母子避難で、私は福島市に住んでいる。いま起きていることは、あの時われわれが直面していたことと同じだ。母数を小さくする、検査をさせない、医者に診せない、そういうことしか考えていない。子どもの命よりも、東京オリンピックをつぶしたくない、という本音がありありと見える。コロナウィルス問題でみなさんが感じておられることは、あの時われわれが感じていたことと一緒だ。子どもを守りたい一心で母子避難させ、「これで正しいんだろうか」と自問もしたが、避難した先に同じ思いで避難したお母さんたちがいて、こうして裁判を起こし、支援してくださる人がいて、「僕の直観は間違っていないかったんだ」と勇気だけられている。
● 連帯のあいさつ・アピール
そのあと、他の訴訟団などから挨拶を受けました。
・「千葉県原発訴訟の原告と家族を支援する会」の山本さんからは、控訴審で現地検証を行なうこと、判決に向けて「原告が希望を持てる判決を求める署名」に取り組んでいるとして、署名協力のお願いがありました。
・福井県美浜町で原発に反対し、「希望の木」(紅どうだん)を植え続ける男性と母の40年を描いた映画「40年 紅どうだん咲く村で」の岡崎まゆみ監督からは、関電への原発マネー還流問題が発覚したこともあり、元町映画館(神戸)で2月22日~28日、京都みなみ会館で3月13日~19日、シアターセブン(大阪)で3月14日~20日に上映するので観に来てほしいとの訴えがありました。
・ひょうご訴訟のぽかぽか☆サポートチームの大鳥居さんからは3月5日の弁論期日と5月31日の近畿訴訟団交流会(今回はひょうご訴訟団が担当)の案内がありました。
・関西訴訟原告団の森松代表からは、「調べない、知らせない、助けない」というキャッチコピーは島薗(進)先生(東京大名誉教授)の言葉だが、今回のコロナウィルスに関しては「調べない、数えない、助からない」と言える、私たちが掲げる「避難の権利」は命を守る権利だと思っている、共に命を守っていこうとの訴えがありました。
・「原発事故による甲状腺被ばくの真相を明らかにする会」の宗川代表からは、会の目的、これまでの取り組み(県立医大・検討委員会などへの要請書提出)が報告されました。
・大飯差し止め訴訟原告団の吉田事務局長からは3月3日の弁論期日(*延期になりました)と共に、5月17日の「老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」の取り組みが報告されました。
● 田辺弁護団事務局長のあいさつ
最後に、裁判手続で来場が遅れた田辺弁護士から発言がありました。
・この間、残念な判決が続き、心配しておられると思うが、私は心配していない。国の論理は「予見はできたけど、結果回避はしなくてよかった。なぜなら、裁量があるから」という変な理屈だ。今日のプレゼンを見ていただければ、そんな理屈は通用しないということはわかると思う。
・1つだけ心配なのは、裁判官が低額な賠償しか認めないこと。これは健康被害がない限り、避難なんかしなくていいと思っている。だけど、公衆被ばくの線量限度は刑罰で担保されている国の制度だ。裁判官が慎重なのは、自分が書いたことで何十万人の人の新たな賠償金が発生することとになる。だから臆病になっている。裁判官は法律家なんだから、ちゃんと法律に基づいて判断してもらわないと困る。
・そこで、いまやっているのは、国際人権法に基づいて健康を求める権利を守っていないということを主張している。避難者はそれを奪われようとしたから避難してきたわけで、日本政府は世界中に恥をさらしている。賠償額の問題も乗り越えられると思っているので、見守ってほしい。
● 参加者の感想
・はからずもコロナウィルスの状況が生々しく、まるでデジャヴだというお話が響きました。
・弁論の背景や原告のお話、他の訴訟からのアピールにいつも頑張っていただいていることが伝わってきて感動しています。(星野博子) ・陳述の元に何があるのか、よくわかる内容でした。
・原告56世帯のアンケートによって明らかにされた「陳述書分析に基づく被害実態の主張」の素晴らしい生の声の苦労話は、大変良かったと思います。意見書の作成はリアルで良かったけれど、この回答を記入した皆さんの気持を思うと心が痛みます。
・解説がわかりやすかったです。次回も期待できます。
・説明を聞いて、バックのことがわかり良かった。
● 原告への激励メッセージ
・おからだを大事に!
・体調に気を付けて下さい!
・みなさんの裁判を力に頑張っています。3・11は関電本店で抗議行動に取り組みます。心をひとつに!
・国民の生命よりも国家権力の体面を優先する最悪最低の安倍政権の末期症状が、まともな日本国民の眼に明らかになりつつあります。原告の皆さん、支援者はもちろん、大多数の国民が常に支援しております。どうか、お身体御自愛くださいますよう、お願い申し上げます。
・新型コロナウィルス、インフルエンザで参加をためらったけど、人が少ないのが心配で来ました。放射能も同じ位に恐れて欲しいです。世間の皆様に言いたいですね。
・アンケート100%回答まで、非常な困難があったと思います。以前の報告集会で、アンケートに答えておられる渦中の苦しいお話をされていたことを思いながら傍聴していました。裁判官にも響いてほしいので、また傍聴に来ます。
・アンケートは大変だったと思います。ありがとうございました。以前のことが思い出され、現実のものとして感じられて良かったです。これからも頑張りましょう。
by shien_kyoto
| 2020-02-29 15:23
| 期日報告集会
|
Comments(0)