2017年 02月 18日
【報告】原発賠償京都訴訟 第23回期日報告 |
原発賠償訴訟・京都原告団を支援する会事務局の上野と申します。
2月17日に行われた京都訴訟第23回期日の報告です。長文、ご容赦願います。
今回は、専門家証人に対する反対尋問が行なわれました。低線量被ばくと健康への影響に関して専門家証人が証言台に立つのは全国でも初めてのことであり、全国的にも注目されています。難しい内容にもかかわらず多くの支援者の方が詰めかけてくださり、抽選となりました。昼休みで帰られた方が16名おられ、午後から来られた方はほぼ全員が傍聴できたのではないかと思います。
日頃から連携して裁判を進めている関西訴訟弁護団との協議で、原告側の崎山比早子証人に対する主尋問は京都弁護団が担 当し、被 告側証人への反対尋問は大阪の弁護団が担当するという役割分担をしたそうで、大阪の加藤弁護士、西念弁護士、柳弁護士の3名が尋問に立ちました。
午前中は、原告側の崎山証人に対する反対尋問でした。崎山証人は約2時間立ちっぱなしで、堂々と尋問に応じられました。
原告側代理人が最も時間をとって尋問したのは、元福島県立医大特命教授だった柴田義貞証人。論点はいろいろありましたが、専門的で理解しがたいことも多かったので、みなさんにも馴染みのある「しきい値」問題と福島県民健康調査に絞って紹介します。
◇被告側の連名意見書が、崎山意見書の「原爆被爆者の死亡率に関する研究」(LSS)14報の評価は「明らかな誤りだ」と批判している点を取り上げました。崎 山意見書が引用した「ゼロ線量が最良のしき い値推定値であった」は「要約に書かれたもので、本文とはニュアンスが違う」と主張しているのに対し、証人に本文を示しながら要約と違うことが書かれているわけではないことを確認していきました。反論できない柴田証人は、最後には「最良と書くなら、どういう意味での最良なのかを書かないといけない」などと14報の著者である小笹晃太郎氏にいちゃもんを付ける始末でした。
◇福島県民健康調査について、被告側は甲状腺がん多発の原因についてスクリーニング効果だと言っています。柴田証人は、「これだけの甲状腺がんが見つかると予想されたか」の問いに「予想された」と強弁。「事前の説明には予想されるとは書いていないではないか」の問いには「議論はされたと思う」と筋違いの答弁。 「予想されたのなら、そう説明しておかないと却って不安を与えるのではないか」との問いに明確な反論はありませんでした。
◇崎山意見書が先行検査(1巡目)でA判定とされた子どもから本格検査(2巡目)で甲状腺がんが見つかる例が多くあったことを指摘したのに対し、前回の主尋問で柴田証人は1巡目でB判定とされたものが2巡目でA判定に戻った例もあったと証言しました。これについて「いったん甲状腺がんと確認されたものが、2巡目でA判定に戻った例はないですね」との問いには「はい」と答えるしかありませんでした。
◇チェルノブイリ事故の時も当初はスクリーニング効果だと言われ、その後放射線によるものと確認されましたが、その論争に「決着をつけた」のが実は柴田証人も かかわった調査報告書でした。事故後に生まれた子どもをスクリーニングしたところ、甲状腺がんは一人も見つからなかったのです。「決着をつける調査がされていない段階で、放射線の影響ではないとは言えないのではないか」の問いには「チェルノブイリと福島では被ばく線量が違う」、「本格検査の結果はスクリーニング効果では説明がつかないのではないか」の問いには「画像に出ない場合もある」などの苦しい言い訳しかできませんでした。
佐々木康人証人には、ICRP(国際放射線防護委員会)勧告の「公衆被ばく限度=年1ミリシーベルト」や「現存被ばく状況」などについて尋問。この中で佐々木証人は、「公衆の被ばく限度は現存被ばく状況では適用されない」と述べ、参考レベル(年1 ~20ミリシーベルト)について「規制のための数値ではなく、防護の最適化を行なうための指標、目安である」と言いながら、「勧告の対象は、国や電力会社ですね」との問いに「いや、一般的に述べている」とそれを認めず、最後は「公衆も含めて」とまで言いました。
*酒井一夫証人についての反対尋問は、放射線による発がん問題に関してでしたが、割愛します。
最後に崎山証人への再主尋問があり、崎山証人は国連科学委員会(UNSCEARアンスケア)について証言。アンスケアは純粋に科学者が集まる通常の国際学会とはまったく違うもの。ICRPは電力会社の支配下にあるが、その委員とIAEA(国際原子力機関)、アンスケアの委員は兼任している人が多い。ゴンザレスはすべて 兼ねている。この3つは密接に繋がっている。チェルノブイリの小児甲状腺がんについてもアンスケアが認めたのは事故から14年後の2000年になってからだった。これに対して、再主尋問を要求した国側代理人からはそれに対する反論は一切なく、裁判長から「アンスケアについては尋ねないんですか。そのために許可したのに」と皮肉を言われる有様でした。
閉廷後に開かれた報告集会には反対尋問に立った大阪の弁護団も出席し、それぞれ自分の担当した尋問について解説。崎山証人への再主尋問を担当した京都弁護団の田辺事務局長は「本当はアンスケアの話はしたくなかったんだけど、昨夜崎山先生の方から逃げてたらだめだと言われた」と裏話を披露。「今日の反対尋問は成功だったと思う」 と総括されました。川中弁護団長は「なんと言っても、最終尋問の崎山先生の気迫がすごかった。今日で大きなヤマを越して、より一層明るい展望が見えてきた」とまとめられました。
次回は3月8日(水)。再び原告本人尋問に戻り、9名の原告が証言台に立ちます。ぜひとも傍聴席を満杯にして、原告を支えていただくようお願い致します。
2月17日に行われた京都訴訟第23回期日の報告です。長文、ご容赦願います。
今回は、専門家証人に対する反対尋問が行なわれました。低線量被ばくと健康への影響に関して専門家証人が証言台に立つのは全国でも初めてのことであり、全国的にも注目されています。難しい内容にもかかわらず多くの支援者の方が詰めかけてくださり、抽選となりました。昼休みで帰られた方が16名おられ、午後から来られた方はほぼ全員が傍聴できたのではないかと思います。
日頃から連携して裁判を進めている関西訴訟弁護団との協議で、原告側の崎山比早子証人に対する主尋問は京都弁護団が担 当し、被 告側証人への反対尋問は大阪の弁護団が担当するという役割分担をしたそうで、大阪の加藤弁護士、西念弁護士、柳弁護士の3名が尋問に立ちました。
午前中は、原告側の崎山証人に対する反対尋問でした。崎山証人は約2時間立ちっぱなしで、堂々と尋問に応じられました。
原告側代理人が最も時間をとって尋問したのは、元福島県立医大特命教授だった柴田義貞証人。論点はいろいろありましたが、専門的で理解しがたいことも多かったので、みなさんにも馴染みのある「しきい値」問題と福島県民健康調査に絞って紹介します。
◇被告側の連名意見書が、崎山意見書の「原爆被爆者の死亡率に関する研究」(LSS)14報の評価は「明らかな誤りだ」と批判している点を取り上げました。崎 山意見書が引用した「ゼロ線量が最良のしき い値推定値であった」は「要約に書かれたもので、本文とはニュアンスが違う」と主張しているのに対し、証人に本文を示しながら要約と違うことが書かれているわけではないことを確認していきました。反論できない柴田証人は、最後には「最良と書くなら、どういう意味での最良なのかを書かないといけない」などと14報の著者である小笹晃太郎氏にいちゃもんを付ける始末でした。
◇福島県民健康調査について、被告側は甲状腺がん多発の原因についてスクリーニング効果だと言っています。柴田証人は、「これだけの甲状腺がんが見つかると予想されたか」の問いに「予想された」と強弁。「事前の説明には予想されるとは書いていないではないか」の問いには「議論はされたと思う」と筋違いの答弁。 「予想されたのなら、そう説明しておかないと却って不安を与えるのではないか」との問いに明確な反論はありませんでした。
◇崎山意見書が先行検査(1巡目)でA判定とされた子どもから本格検査(2巡目)で甲状腺がんが見つかる例が多くあったことを指摘したのに対し、前回の主尋問で柴田証人は1巡目でB判定とされたものが2巡目でA判定に戻った例もあったと証言しました。これについて「いったん甲状腺がんと確認されたものが、2巡目でA判定に戻った例はないですね」との問いには「はい」と答えるしかありませんでした。
◇チェルノブイリ事故の時も当初はスクリーニング効果だと言われ、その後放射線によるものと確認されましたが、その論争に「決着をつけた」のが実は柴田証人も かかわった調査報告書でした。事故後に生まれた子どもをスクリーニングしたところ、甲状腺がんは一人も見つからなかったのです。「決着をつける調査がされていない段階で、放射線の影響ではないとは言えないのではないか」の問いには「チェルノブイリと福島では被ばく線量が違う」、「本格検査の結果はスクリーニング効果では説明がつかないのではないか」の問いには「画像に出ない場合もある」などの苦しい言い訳しかできませんでした。
佐々木康人証人には、ICRP(国際放射線防護委員会)勧告の「公衆被ばく限度=年1ミリシーベルト」や「現存被ばく状況」などについて尋問。この中で佐々木証人は、「公衆の被ばく限度は現存被ばく状況では適用されない」と述べ、参考レベル(年1 ~20ミリシーベルト)について「規制のための数値ではなく、防護の最適化を行なうための指標、目安である」と言いながら、「勧告の対象は、国や電力会社ですね」との問いに「いや、一般的に述べている」とそれを認めず、最後は「公衆も含めて」とまで言いました。
*酒井一夫証人についての反対尋問は、放射線による発がん問題に関してでしたが、割愛します。
最後に崎山証人への再主尋問があり、崎山証人は国連科学委員会(UNSCEARアンスケア)について証言。アンスケアは純粋に科学者が集まる通常の国際学会とはまったく違うもの。ICRPは電力会社の支配下にあるが、その委員とIAEA(国際原子力機関)、アンスケアの委員は兼任している人が多い。ゴンザレスはすべて 兼ねている。この3つは密接に繋がっている。チェルノブイリの小児甲状腺がんについてもアンスケアが認めたのは事故から14年後の2000年になってからだった。これに対して、再主尋問を要求した国側代理人からはそれに対する反論は一切なく、裁判長から「アンスケアについては尋ねないんですか。そのために許可したのに」と皮肉を言われる有様でした。
閉廷後に開かれた報告集会には反対尋問に立った大阪の弁護団も出席し、それぞれ自分の担当した尋問について解説。崎山証人への再主尋問を担当した京都弁護団の田辺事務局長は「本当はアンスケアの話はしたくなかったんだけど、昨夜崎山先生の方から逃げてたらだめだと言われた」と裏話を披露。「今日の反対尋問は成功だったと思う」 と総括されました。川中弁護団長は「なんと言っても、最終尋問の崎山先生の気迫がすごかった。今日で大きなヤマを越して、より一層明るい展望が見えてきた」とまとめられました。
次回は3月8日(水)。再び原告本人尋問に戻り、9名の原告が証言台に立ちます。ぜひとも傍聴席を満杯にして、原告を支えていただくようお願い致します。
by shien_kyoto
| 2017-02-18 00:00
| 期日
|
Comments(0)